「ムリしてね」

「頑張れ」 「まだやれる」 「みんな耐えている」

 

自分がまだまだ甘えてるだけなのかもしれないけれどこの言葉をかけられるたびに辛くなる。もう頑張っている。お前が言うな。うるさい関係ないだろ。そんな言葉にならない言葉たちが喉の奥へと沈んでいく。おそらくこれからもずっとこの言葉をかけ続けられるのだろう。

 

話はまったく違う方向に転換するが私が大学受験で滅入っていたときに一つだけ気が楽になるものがあった。漫画である。ただ一言に漫画と言っても全般というわけではなく「宇宙兄弟」。兄弟のムッタとヒビトが宇宙へと目指すアレだ。現在既に31巻が世に出ており2017年6月現在で累計1900万部を超えているらしい。換算すると都民一人1冊以上は持っている計算になるらしい。凄い。

 

話を戻すとこの宇宙兄弟16巻に「ムリしてね」という言葉がある。大枠は省くが主人公ムッタの親友ケンジが娘風佳に言われるセリフだ。「頑張れ」でもなく「ムリしないでね」でもなく「ムリしてね」。父親への期待、心配、あらゆる気持ちを率直に伝えた結果がこの「ムリしてね」だったのだろう。鬱の人に「頑張れ」といった言葉をかけていけないように言葉にはその時、場所に合った使い方があるものだがここでの風佳の一言は正に父ケンジに合ったものだった。頑張らなきゃ踏ん張らなければいけない場面で娘から発破をかけられる。

私も言葉のTPOを考えその人に合った言葉をかけられる人間になりたい。